歯科矯正トラブルについて-歯科医師として意見を語ります-
記事を書いているのが23年6月、
”歯科矯正トラブルで涙の訴え 4億5000万円賠償求め 312人が集団提訴へ”
なる記事をヤフーニュースで見ました。
大変センセーショナルな内容で
それについて一歯科医師として、思うところを書きます。
これは「グッド!モーニング」というテレビ朝日で特集された
内容だったようですね。
記事の内容
記事全文を紹介すると煩雑になりますので、
記事に書かれた内容を簡単に要約すると、、、
ある歯科クリニックで無料モニターの申し込みが行われた
↓
内容としては、
『契約を結んで187万円を支払えば、その後、
クリニック側から謝礼として、毎月5万円がキャッシュバックされ
実質、無料で歯の矯正ができる』(記事引用)
↓
しかし、22年3月、突如毎月5万円の返金が途絶え、クリニックも閉院。
治療も返金も放置されたままとなった女性患者ら153人(後に312人)が
集団訴訟を起こした
というものです。
312人、4億5000万円という超大規模な提訴となり、
歯科に関心のなかった人にも注目されているようです。
患者から集めた総額20億円もどこへやら、
社長や歯科医師が対応に追われているという内容でした。
記事に対する世間の反応
”こんなことを信じる方もどうかと思う。
タダより怖いものはない”
”一旦支払って後で返す、なんて詐欺に決まっている”
等の、騙された方々に
注意喚起するような内容もあれば
”歯科矯正はマウスピースやインビザラインなど、
いろいろな謳い文句が踊っているが
矯正学はそんなに単純なものでない。
よくよく相談して始めるのが良い”
”自分も3年間矯正したが
歯は一生もののことなので
期間、費用もかかったが
しっかり選んでやってもらって良かった”
など、歯科の事情に精通したような意見もありました。
記事に対する個人的な意見
私は当事者ではありませんので、
記事の信ぴょう性がどこまであるか、そこは判りませんが、
記事の内容を信じたとして思うところを書きます。
歯科医師の立場なので、
今回のことで「だまされる方も悪い」という意見も散見されましたが
その道のスペシャリストにあたる専門家に勧められれば
一般の方がそちらに引っ張られるのは致し方ないかな、と思います。
ですから、100%、だます方が悪いという意見です。
もちろん歯科医師という資格を持っていても
その活動方法は100人100色であり、
グレーゾーンで稼いでいる人が多くいるのも知っています。
経営を回すために
あの手、この手をうたねばならないこともあるでしょう。
しかし、国家資格を持った専門家ですから
その資格に恥じない活動をするべきだと思いますし
真摯に、わかりやすく、相手の悩みにこたえる
歯科医師でありたいと常に思っています。
実際、歯科医師法第一条には
”歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによって、
公衆衛生の向上及び増進に寄与し、
もって国民の健康な生活を確保するものとする。”
と書かれていますよ。
学生時代の頃、矯正の先生に
矯正治療のやりがいについて聞いた時のことを思い出します。
「自分が矯正治療をして報われたと思うことがある。
それは担当していた患者さんが矯正治療を終えた後に
『今度、結婚することになりました』と笑顔で報告しに来てくれた時だ」
と言われていました。
輝く将来を夢見て矯正治療をすることになった方々の
期待を一身に背負うのが矯正歯科医であると思います。
変な治療をさせられないためには?
さて、矯正治療についてうちの歯科医院であれば
診査、資料とり、材料費、技術料、そういうものを含めて
小児の時期であれば30~40万、
大人の矯正では80~100万
ぐらいでしょうか。
治療期間の差や後戻り防止のため、多少の上乗せはあるでしょうが、
どこの矯正歯科でもそれぐらいが相場ではないでしょうか。
期間も時期によりますが、2~3年は必要としています。
矯正治療は多くの場合が保険外治療になりますので、
法外に安い金額の場合、疑わなければならないと思います。
まとめ
ひと昔前に比べて、
インターネットやSNSで矯正治療が一般の方々と近い存在になりました。
そんな中で起きた、今回のような騒動、
同業者として恥ずかしく思いますし、
今後このようなことがあってはならないと思います。
しかし、このような事例が今後も出てくる可能性はあります。
矯正治療は決して安いものではありません。
信頼できる歯科医師を探し、よく相談の上始めることを
お勧めしたいと思います。
今回も最後までお読みいただき、
有難うございました( *´艸`)