子供のむし歯は減った。歯医者は変わりゆく時代のニーズに対応できるか
歯科においてむし歯の本数を示す際に、
DMF
なる指数を用いることがあります。
Dとはdecayed teeth:まだ治してないむし歯
Mとはmissing teeth:むし歯が原因で抜いた歯
Fとはfilled teeth:むし歯の治療をした歯
の略であり、それらを足し合わせたものがDMF指数であり、
DMFTは集団のむし歯の経験を表す指数として用いられます。
特に、永久歯が生えそろう頃の12歳のDMFTは
世界的にむし歯経験を評価する標準的なものさしとなっています。
DMFTの変化
文部科学省の学校保健統計調査によって
12歳のDMFTは約5年ごとに都道府県別に調査されています。
それがどんどん減少しているのです。
平成22年度は平均1.4程度だったものが
平成27年度には平均1.0程度、
そして最新の令和3年度では平均が0.63となっています!!
つまり、12歳において5人に3人しかむし歯がない時代が訪れようとしています。
ちなみに全国トップは新潟県で0.2、
岐阜、愛知が0.3で、富山、長野、静岡、京都が0.4と続きます。
計算上は新潟では12歳時に5人に1人しかむし歯を見つけることができない、
ということです!!
対してまだダントツに高いのは沖縄で1.6です。
と言ってもここ十年で2.6→1.6と変化しているので
相当改善されていると言ってよいと思います。
なぜDMFTは下がったのか?
一つに絞るのは難しいので、そう考えられている意見を紹介します。
・定期検診が一般化したから
都道府県や市町村によって異なりますが、
小学校、中学校以下では保険で負担がかかりません。
地域によっては高校まで0割負担でいけることが大きいと思います。
予防歯科の要は毎月ないし3か月に一回の定期検診と言って良いと思います。
・フッ素の普及
フッ素が歯磨き粉や、フッ素ジェル、フッ素洗口等で使われるようになり
また歯医者でのフッ素塗布が推奨されることで
むし歯のリスクは大きく下がったと言われます。
等の理由が考えられています。
対して、まだDMFTが高い沖縄では
・定期検診に行く習慣がない
・日頃の歯磨きの頻度が少ない
・甘いもののダラダラ食べが多い
等が理由として指摘されています。
歯科の未来の展望
今後もおそらくDMFTは減り続け、
むし歯は少なくなっていくと思います。
皆さんにとってそれは大変素晴らしいことではありますが
歯を削って詰めることを生業としてきた歯医者としては
この時代の変化についていく必要があります。
特に小児歯科においては、先に決断が迫られる時が来ていました。
おおよそ選択肢として
・予防中心の小児歯科へシフトする
今までは学校で治療カードをもらったら、
歯が痛くなったら行っていた歯医者から
フッ素やシーラントという処置によって
そもそもむし歯を作る前に管理してしまおう、という流れです。
定期検診をどう促していくか、が大切なポイントです。
・小児→ファミリー歯科へ
むし歯は減ったと言っても、全年齢を見ればもちろんまだまだです。
小児、一般、すべて見るのは歯科医師、衛生士ともに大変ですが
そのような選択もあると思います。
・矯正治療も含めた歯科へ
乳歯の時期、乳歯と永久歯が混在する時期、永久歯が生えそろった時期、と
歯並びを直すには適切な時期がいくつかあります。
小児と矯正は交わることが多いため、
矯正も含めた小児歯科ということはおおいにあると思います。
なんだ、小児のことばかりじゃないか。
と思いますか。
未来、一般歯科においても似たような状況は出てくると思います。
もちろん、中学生以降でも新たにむし歯になる時期はありますが、
それでも絶対数は減っていくと思います。
来るべき未来に備えて、どのようなイメージを作っていくか、
考えるきっかけになるかもしれません。